海炭市叙景

「わたしたちは、あの場所にもどるのだ。」
公式サイト

京都での公開日初日。開場前からたくさんの人の列ができました。本編上前、監督および出演者の方のビデオレターが上映されました。
何度も芥川賞候補にあがりながら、文学賞にめぐまれず、みずから命を絶った佐藤泰志の「海炭市叙景」の18編からの5編で構成されたオムニバス映画。
"海炭市"は架空の町ですが、モデルは函館。佐藤氏も函館出身で映画も函館市で撮影されている。オール函館ロケといっても観光映画ではなく、疲弊した地方都市で生きる人々の日常と苦悩が淡々と描かれています。この映画は、函館のミニシアターの支配人さんが、「映画化をしたい!」と実行委員会を立ち上げ、朗読会やパネル展などのイベントを通し資金集めなども行われた函館市民によってつくられた映画です。メインキャスト含め登場人物の多くはオーディションで選ばれた地元の方です。
やりきれなさを抱えて生きる人の5つのストーリー。それぞれ大切な場所、なくしたくないもの、忘れられない思い出がある。劇的に「良い方向へ向かう」という展開は用意されていないけど、最後、雪がとけて開発工事の騒音の中、愛猫グレをやさしくなでつけるトキ婆さんのしわだらけの手に希望が見えた。「何が自分にとって大切なのか」見失わないことが大切。